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高野聖その44
「さて、聞《き》かつしやい、私《わし》はそれから檜《ひのき》の裏《うら》を抜《ぬ》けた、岩《いは》の下《した》から岩《いは》の上《うへ》へ出《で》た、樹《き》の中《なか》を潜《くゞ》つて草深《くさふか》い径《こみち》を何処《どこ》までも、何処《どこ》までも。
すると何時《いつ》の間《ま》にか今《いま》上《あが》つた山《やま》は過《す》ぎて又《また》一ツ山《やま》が近《ちか》づいて来《き》た、此辺《このあたり》暫《しばら》くの間《あひだ》は野《の》が広々《ひろ/″\》として、前刻《さツき》通《とほ》つた本街道《ほんかいだう》より最《も》つと巾《はゞ》の広《ひろ》い、なだらかな一|筋道《すぢみち》。
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「さんずい+散」、36-13]《しぶき》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ばら/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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