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高野聖その239
其時《そのとき》は早《は》や、夜《よる》がものに譬《たと》へると谷《たに》の底《そこ》ぢや、白痴《ばか》がだらしのない寝息《ねいき》も聞《きこ》えなくなると、忽《たちま》ち戸《と》の外《そと》にものゝ気勢《けはひ》がして来《き》た。
獣《けもの》の足音《あしおと》のやうで、然《さ》まで遠《とほ》くの方《はう》から歩行《ある》いて来《き》たのではないやう、猿《さる》も、蟇《ひき》も居《ゐ》る処《ところ》と、気休《きやす》めに先《ま》づ考《かんが》へたが、なかなか何《ど》うして。
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
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(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
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(例)※[#「さんずい+散」、36-13]《しぶき》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ばら/\と
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