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高野聖その125
自分達《じぶんだち》が立《た》つた側《がは》は、却《かへ》つて此方《こなた》の山《やま》の裾《すそ》が水《みづ》に迫《せま》つて、丁度《ちやうど》切穴《きりあな》の形《かたち》になつて、其処《そこ》へ此《こ》の石《いし》を箝《は》めたやうな誂《あつらへ》。川上《かはかみ》も下流《かりう》も見《み》えぬが、向《むか》ふの彼《か》の岩山《いはやま》、九十九折《つゞらをれ》のやうな形《かたち》、流《ながれ》は五|尺《しやく》、三|尺《しやく》、一|間《けん》ばかりづゝ上流《じやうりう》の方《はう》が段々《だん/″\》遠《とほ》く、飛々《とび/″\》に岩《いは》をかゞつたやうに隠見《いんけん》して、いづれも月光《げつくわう》を浴《あ》びた、銀《ぎん》の鎧《よろひ》の姿《すがた》、目《ま》のあたり近《ちか》いのはゆるぎ糸《いと》を捌《さば》くが如《ごと》く真白《まツしろ》に飜《ひるがへ》つて。
(結構《けつこう》な流《ながれ》でございますな。)
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
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(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
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(例)※[#「さんずい+散」、36-13]《しぶき》
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(例)ばら/\と
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