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高野聖その121
いかにも大木《たいぼく》の僵《たふ》れたのが草《くさ》がくれに其《そ》の幹《みき》をあらはして居《ゐ》る、乗《の》ると足駄穿《あしだばき》で差支《さしつか》へがない、丸木《まるき》だけれども可恐《おそろ》しく太《ふと》いので、尤《もつと》もこれを渡《わた》り果《は》てると忽《たちま》ち流《ながれ》の音《おと》が耳《みゝ》に激《げき》した、それまでには余程《よほど》の間《あひだ》。
仰《あふ》いで見《み》ると松《まつ》の樹《き》はもう影《かげ》も見《み》えない、十三|夜《や》の月《つき》はずつと低《ひく》うなつたが、今《いま》下《お》りた山《やま》の頂《いただき》に半《なか》ばかゝつて、手《て》が届《とゞ》きさうにあざやかだけれども、高《たか》さは凡《およ》そ計《はか》り知《し》られぬ。
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
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(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
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