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高野聖その67
此《こ》の恐《おそろし》い山蛭《やまびる》は神代《かみよ》の古《いにしへ》から此処《こゝ》に屯《たむろ》をして居《ゐ》て人《ひと》の来《く》るのを待《ま》ちつけて、永《なが》い久《ひさ》しい間《あひだ》に何《ど》の位《くらゐ》何斛《なんごく》かの血《ち》を吸《す》ふと、其処《そこ》でこの虫《むし》の望《のぞみ》が叶《かな》ふ其《そ》の時《とき》はありつたけの蛭《ひる》が不残《のこらず》吸《す》つたゞけの人間《にんげん》の血《ち》を吐出《はきだ》すと、其《それ》がために土《つち》がとけて山《やま》一ツ一|面《めん》に血《ち》と泥《どろ》との大沼《おほぬま》にかはるであらう、其《それ》と同時《どうじ》に此処《こゝ》に日《ひ》の光《ひかり》を遮《さへぎ》つて昼《ひる》もなほ暗《くら》い大木《たいぼく》が切々《きれ/″\》に一ツ一ツ蛭《ひる》になつて了《しま》うのに相違《さうゐ》ないと、いや、全《まツた》くの事《こと》で。」
第九
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
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(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
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(例)※[#「さんずい+散」、36-13]《しぶき》
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(例)ばら/\と
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