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高野聖その146
(先刻《さツき》小屋《こや》へ入《はい》つて世話《せわ》をしましたので、ぬら/\した馬《うま》の鼻息《はないき》が体中《からだぢゆう》へかゝつて気味《きみ》が悪《わる》うござんす。丁度《ちやうど》可《よ》うございますから私《わたし》も体《からだ》を拭《ふ》きませう、)
と姉弟《あねおとうと》が内端話《うちはばなし》をするやうな調子《てうし》。手《て》をあげて黒髪《くろかみ》をおさへながら腋《わき》の下《した》を手拭《てぬぐひ》でぐいと拭《ふ》き、あとを両手《りやうて》で絞《しぼ》りながら立《た》つた姿《すがた》、唯《たゞ》これ雪《ゆき》のやうなのを恁《かゝ》る霊水《れいすい》で清《きよ》めた、恁云《かうい》ふ女《をんな》の汗《あせ》は薄紅《うすくれなゐ》になつて流《なが》れやう。
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「さんずい+散」、36-13]《しぶき》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ばら/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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