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高野聖その66
私《わし》は思《おも》はず恐怖《きようふ》の声《こゑ》を立《た》てゝ叫《さけ》んだすると何《なん》と? 此時《このとき》は目《め》に見《み》えて、上《うへ》からぼたり/\と真黒《まツくろ》な瘠《や》せた筋《すぢ》の入《はい》つた雨《あめ》が体《からだ》へ降《ふり》かゝつて来《き》たではないか。
草鞋《わらじ》を穿《は》いた足《あし》の甲《かふ》へも落《おち》た上《うへ》へ又《また》累《かさな》り、並《なら》んだ傍《わき》へ又《また》附着《くツつ》いて爪先《つまさき》も分《わか》らなくなつた、然《さ》うして活《い》きてると思《おも》ふだけ脈《みやく》を打《う》つて血《ち》を吸《す》ふやうな。思《おも》ひなしか一ツ一ツ伸縮《のびちゞみ》をするやうなのを見《み》るから気《き》が遠《とほ》くなって、其時《そのとき》不思議《ふしぎ》な考《かんがへ》が起《お》きた。
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
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(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
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(例)※[#「さんずい+散」、36-13]《しぶき》
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(例)ばら/\と
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