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高野聖その273
娘《むすめ》の情《なさけ》で内《うち》と一|所《しよ》に膳《ぜん》を並《なら》べて食事《しよくじ》をさせると、沢庵《たくわん》の切《きれ》をくわへて隅《すみ》の方《はう》へ引込《ひきこ》むいぢらしさ。
弥《いよい》よ明日《あす》が手術《しゆじゆつ》といふ夜《よ》は、皆《みんな》寝静《ねしづ》まつてから、しく/\蚊《か》のやうに泣《な》いて居《ゐ》るのを、手水《てうづ》に起《お》きた娘《むすめ》が見《み》つけてあまりの不便《ふびん》さに抱《だ》いて寝《ね》てやつた。
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「さんずい+散」、36-13]《しぶき》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ばら/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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