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高野聖その274
さて療治《れうぢ》となると例《れい》の如《ごと》く娘《むすめ》が背後《うしろ》から抱《だ》いて居《ゐ》たから、脂汗《あぶらあせ》を流《なが》しながら切《き》れものが入《はい》るのを、感心《かんしん》にじつと耐《こら》へたのに、何処《どこ》を切違《きりちが》へたか、それから流《なが》れ出《だ》した血《ち》が留《と》まらず、見《み》る/\内《うち》に色《いろ》が変《かは》つて、危《あぶな》くなつた。
医者《いしや》も蒼《あを》くなつて、騒《さわ》いだが、神《かみ》の扶《たす》けか漸《やうや》う生命《いのち》は取留《とりと》まり、三|日《か》ばかりで血《ち》も留《とま》つたが、到頭《たうとう》腰《こし》が抜《ぬ》けた、固《もと》より不具《かたわ》。
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「さんずい+散」、36-13]《しぶき》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ばら/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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