TOP
高野聖その259
牛《うし》か馬《うま》か、蟇《ひきがへる》か、猿《さる》か、蝙蝠《かはほり》か、何《なに》にせい飛《と》んだか跳《は》ねたかせねばならぬ。谷川《たにがは》から上《あが》つて来《き》さしつた時《とき》、手足《てあし》も顔《かほ》も人《ひと》ぢやから、おらあ魂消《たまげ》た位《くらゐ》、お前様《まへさま》それでも感心《かんしん》に志《こゝろざし》が堅固《けんご》ぢやから助《たす》かつたやうなものよ。
何《なん》と、おらが曳《ひ》いて行《い》つた馬《うま》を見《み》さしつたらう、それで、孤家《ひとつや》で来《き》さつしやる山路《やまみち》で富山《とやま》の反魂丹売《はんごんたんうり》に逢《あ》はしつたといふではないか、それ見《み》さつせい、彼《あ》の助倍《すけべい》野郎《やらう》、疾《とう》に馬《うま》になつて、それ馬市《うまいち》で銭《おあし》になつて、お銭《あし》が、そうら此《こ》の鯉《こひ》に化《ば》けた。大好物《だいかうぶつ》で晩飯《ばんめし》の菜《さい》になさる、お嬢様《ぢやうさま》を一|体《たい》何《なん》じやと思《おも》はつしやるの。)」
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
次へ
底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
-------------------------------------------------------
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「さんずい+散」、36-13]《しぶき》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ばら/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
-------------------------------------------------------