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高野聖その16
私《わし》が今《いま》話《はなし》の序開《じよびらき》をした其《そ》の飛騨《ひだ》の山越《やまごえ》を遣《や》つた時《とき》の、麓《ふもと》の茶屋《ちやゝ》で一|所《しよ》になつた富山《とやま》の売薬《ばいやく》といふ奴《やつ》あ、けたいの悪《わる》い、ねぢ/\した厭《いや》な壮佼《わかいもの》で。
先《ま》づこれから峠《たうげ》に掛《かゝ》らうといふ日《ひ》の、朝早《あさはや》く、尤《もつと》も先《せん》の泊《とまり》はものゝ三|時《じ》位《ぐらゐ》には発《た》つて来《き》たので、涼《すゞし》い内《うち》に六|里《り》ばかり、其《そ》の茶屋《ちやゝ》までのしたのぢやが、朝晴《あさばれ》でぢり/\暑《あつ》いわ。
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「さんずい+散」、36-13]《しぶき》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ばら/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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