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高野聖その47
丁度《ちやうど》此《こ》の上口《のぼりくち》の辺《あたり》に美濃《みの》の蓮大寺《れんたいじ》の本堂《ほんだう》の床下《ゆかした》まで吹抜《ふきぬ》けの風穴《かざあな》があるといふことを年経《とした》つてから聞《き》きましたが、なか/\其処《そこ》どころの沙汰《さた》ではない、一|生懸命《しやうけんめい》、景色《けしき》も奇跡《きせき》もあるものかい、お天気《てんき》さへ晴《は》れたか曇《くも》つたか訳《わけ》が解《わか》らず、目《ま》まじろぎもしないですた/\と捏《こ》ねて上《のぼ》る。
とお前様《まへさま》お聞《き》かせ申《まを》す話《はなし》は、これからぢやが、最初《さいしよ》に申《まを》す通《とほ》り路《みち》がいかにも悪《わる》い、宛然《まるで》人《ひと》が通《かよ》ひさうでない上《うへ》に、恐《おそろし》いのは、蛇《へび》で。両方《りやうはう》の叢《くさむら》に尾《を》と頭《あたま》とを突込《つツこ》んで、のたりと橋《はし》を渡《わた》して居《ゐ》るではあるまいか。
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
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(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
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(例)ばら/\と
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