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高野聖その262
「いや、先《ま》づ聞《き》かつしやい、彼《か》の孤家《ひとつや》の婦人《をんな》といふは、旧《もと》な、これも私《わし》には何《なに》かの縁《えん》があつた、あの恐《おそろし》い魔処《ましよ》へ入《はい》らうといふ岐道《そばみち》の水《みづ》が溢《あふ》れた往来《わうらい》で、百姓《ひやくしやう》が教《をし》へて、彼処《あすこ》は其《そ》の以前《いぜん》医者《いしや》の家《いへ》であつたといふたが、其《そ》の家《いへ》の嬢様《ぢやうさま》ぢや。
何《なん》でも飛騨《ひだ》一|円《ゑん》当時《たうじ》変《かは》つたことも珍《めづ》らしいこともなかつたが、唯《たゞ》取出《とりい》でゝいふ不思議《ふしぎ》は、此《こ》の医者《いしや》の娘《むすめ》で、生《うま》れると玉《たま》のやう。
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
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(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
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(例)※[#「さんずい+散」、36-13]《しぶき》
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(例)ばら/\と
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