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高野聖その213
(那《あ》の流《なが》れは其麼《どんな》病《やまひ》にでもよく利《き》きます、私《わたし》が苦労《くらう》をいたしまして骨《ほね》と皮《かは》ばかりに体《からだ》が朽《か》れましても半日《はんにち》彼処《あすこ》につかつて居《を》りますと、水々《みづ/\》しくなるのでございますよ。尤《もツと》も那《あ》のこれから冬《ふゆ》になりまして山《やま》が宛然《まるで》氷《こほ》つて了《しま》ひ、川《かは》も崖《がけ》も不残《のこらず》雪《ゆき》になりましても、貴僧《あなた》が行水《ぎやうずゐ》を遊《あそ》ばした彼処《あすこ》ばかりは水《みづ》が隠《かく》れません、然《さ》うしていきりが立《た》ちます。
鉄砲疵《てツぱうきづ》のございます猿《さる》だの、貴僧《あなた》、足《あし》を折《を》つた五位鷺《ごゐさぎ》、種々《いろ/\》な者《もの》が浴《ゆあ》みに参《まゐ》りますから其《そ》の足痕《あしあと》で崖《がけ》の路《みち》が出来《でき》ます位《くらゐ》、屹《きツ》と其《それ》が利《き》いたのでございませう。
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
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(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
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(例)ばら/\と
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