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高野聖その102
私《わし》は余《あま》り気《き》の毒《どく》さに顔《かほ》も上《あ》げられないで密《そ》つと盗《ぬす》むやうにして見《み》ると、婦人《をんな》は何事《なにごと》も別《べつ》に気《き》に懸《か》けては居《を》らぬ様子《やうす》、其《その》まゝ後《あと》へ跟《つ》いて出《で》やうとする時《とき》、紫陽花《あぢさい》の花《はな》の蔭《かげ》からぬいと出《で》た一|名《めい》の親仁《おやぢ》がある。
背戸《せど》から廻《まは》つて来《き》たらしい、草鞋《わらじ》を穿《は》いたなりで、胴乱《どうらん》の根付《ねつけ》を紐長《ひもなが》にぶらりと提《さ》げ、啣煙管《くはへぎせる》をしながら並《なら》んで立停《たちとま》つた。
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
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(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
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(例)※[#「さんずい+散」、36-13]《しぶき》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ばら/\と
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