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高野聖その38
(未《ま》だずつと何処《どこ》までも此《この》水《みづ》でございませうか。)
(何《なん》のお前様《まへさま》、見《み》たばかりぢや、訳《わけ》はござりませぬ、水《みづ》になつたのは向《むか》ふの那《あ》の藪《やぶ》までゞ、後《あと》は矢張《やツぱり》これと同一《おんなじ》道筋《みちすぢ》で山《やま》までは荷車《にぐるま》が並《なら》んで通《とほ》るでがす。藪《やぶ》のあるのは旧《もと》大《おほき》いお邸《やしき》の医者様《いしやさま》の跡《あと》でな、此処等《こゝいら》はこれでも一ツの村《むら》でがした、十三|年《ねん》前《ぜん》の大水《おほみづ》の時《とき》、から一|面《めん》に野良《のら》になりましたよ、人死《ひとじに》もいけえこと。御坊様《ごばうさま》歩行《ある》きながらお念仏《ねんぶつ》でも唱《とな》へて遣《や》つてくれさつしやい)と問《と》はぬことまで親切《しんせつ》に話《はな》します。其《それ》で能《よ》く仔細《しさい》が解《わか》つて確《たしか》になりはなつたけれども、現《げん》に一人《ひとり》蹈迷《ふみまよ》つた者《もの》がある。
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
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(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
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(例)※[#「さんずい+散」、36-13]《しぶき》
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(例)ばら/\と
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