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高野聖その149
私《わし》は其《その》まゝ目《め》を外《そ》らしたが、其《そ》の一|段《だん》の婦人《をんな》の姿《すがた》が月《つき》を浴《あ》びて、薄《うす》い煙《けぶり》に包《つゝ》まれながら向《むか》ふ岸《ぎし》の※[#「さんずい+散」、36-13]《しぶき》に濡《ぬ》れて黒《くろ》い、滑《なめら》かな、大《おほき》な石《いし》へ蒼味《あをみ》を帯《お》びて透通《すきとほ》つて映《うつ》るやうに見《み》えた。
するとね、夜目《よめ》で判然《はつきり》とは目《め》に入《い》らなんだが地体《ぢたい》何《なん》でも洞穴《ほらあな》があると見《み》える。ひら/\と、此方《こちら》からもひら/\と、ものゝ鳥《とり》ほどはあらうといふ大蝙蝠《おほかはほり》が目《め》を遮《さへぎ》つた。
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「さんずい+散」、36-13]《しぶき》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ばら/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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