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高野聖その30
田圃《たんぼ》が湖《みづうみ》にならぬが不思議《ふしぎ》で、どう/\と瀬《せ》になつて、前途《ゆくて》に一|叢《むら》の藪《やぶ》が見《み》える、其《それ》を境《さかひ》にして凡《およ》そ二|町《ちやう》ばかりの間《あひだ》宛《まる》で川《かは》ぢや。礫《こいし》はばら/\、飛石《とびいし》のやうにひよい/\と大跨《おほまた》で伝《つた》へさうにずつと見《み》ごたへのあるのが、それでも人《ひと》の手《て》で並《なら》べたに違《ちが》ひはない。
尤《もつと》も衣服《きもの》を脱《ぬ》いで渡《わた》るほどの大事《おほごと》なのではないが、本街道《ほんかいだう》には些《ち》と難儀《なんぎ》過《す》ぎて、なか/\馬《うま》などが歩行《ある》かれる訳《わけ》のものではないので。
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「さんずい+散」、36-13]《しぶき》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ばら/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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