TOP
高野聖その3
旅僧《たびそう》は然《さ》ういつて、握拳《にぎりこぶし》を両方《りやうはう》枕《まくら》に乗《の》せ、其《それ》で額《ひたひ》を支《さゝ》へながら俯向《うつむ》いた。
道連《みちづれ》になつた上人《しやうにん》は、名古屋《なごや》から此《こ》の越前《えちぜん》敦賀《つるが》の旅籠屋《はたごや》に来《き》て、今《いま》しがた枕《まくら》に就《つ》いた時《とき》まで、私《わたし》が知《し》つてる限《かぎ》り余《あま》り仰向《あふむ》けになつたことのない、詰《つま》り傲然《がうぜん》として物《もの》を見《み》ない質《たち》の人物《じんぶつ》である。
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
次へ
底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
-------------------------------------------------------
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「さんずい+散」、36-13]《しぶき》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ばら/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
-------------------------------------------------------