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高野聖その50
あツといふて飛退《とびの》いたが、其《それ》も隠《かく》れた。三|度目《どめ》に出会《であ》つたのが、いや急《きふ》には動《うご》かず、然《しか》も胴体《どうたい》の太《ふと》さ、譬《たと》ひ這出《はひだ》した処《ところ》でぬら/\と遣《や》られては凡《およ》そ五|分間《ふんかん》位《ぐらゐ》は尾《を》を出《だ》すまでに間《ま》があらうと思《おも》ふ長虫《ながむし》と見《み》えたので已《や》むことを得《え》ず私《わし》は跨《また》ぎ越《こ》した、途端《とたん》に下腹《したはら》が突張《つツぱ》つてぞツと身《み》の毛《け》、毛穴《けあな》が不残《のこらず》鱗《うろこ》に変《かは》つて、顔《かほ》の色《いろ》も其《そ》の蛇《へび》のやうになつたらうと目《め》を塞《ふさ》いだ位《くらゐ》。
絞《しぼ》るやうな冷汗《ひやあせ》になる気味《きみ》の悪《わる》さ、足《あし》が窘《すく》んだといふて立《た》つて居《ゐ》られる数《すう》ではないから、びく/\しながら路《みち》を急《いそ》ぐと又《また》しても居《ゐ》たよ。
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
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(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
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(例)ばら/\と
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