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高野聖その54
又《また》二|里《り》ばかり大蛇《おろち》の畝《うね》るやうな坂《さか》を、山懐《やまふところ》に突当《つきあた》つて岩角《いはかど》を曲《まが》つて、木《き》の根《ね》を繞《めぐ》つて参《まゐ》つたが此処《こゝ》のことで余《あま》りの道《みち》ぢやつたから、参謀本部《さんぼうほんぶ》の絵図面《ゑづめん》を開《ひら》いて見《み》ました。
何《なに》矢張《やツぱり》道《みち》は同一《おんなじ》で聞《き》いたにも見《み》たのにも変《かはり》はない、旧道《きうだう》は此方《こちら》に相違《さうゐ》はないから心遣《こゝろや》りにも何《なん》にもならず、固《もと》より歴《れツき》とした図面《づめん》といふて、描《ゑが》いてある道《みち》は唯《たゞ》栗《くり》の毯《いが》の上《うへ》へ赤《あか》い筋《すぢ》が引張《ひつぱ》つてあるばかり。
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「さんずい+散」、36-13]《しぶき》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ばら/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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