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高野聖その219
(貴僧《あなた》、申《まを》せば何《なん》でも出来《でき》ませうと思《おも》ひますけれども、此人《このひと》の病《やまひ》ばかりはお医者《いしや》の手《て》でも那《あ》の水《みづ》でも復《なほ》りませなんだ、両足《りやうあし》が立《た》ちませんのでございますから、何《なに》を覚《おぼ》えさしましても役《やく》には立《た》ちません。其《それ》に御覧《ごらん》なさいまし、お辞義《じぎ》一《ひと》ツいたしますさい、あの通《とほり》大儀《たいぎ》らしい。
ものを教《おし》へますと覚《おぼ》えますのに嘸《さぞ》骨《ほね》が折《を》れて切《せつ》なうござんせう、体《からだ》を苦《くる》しませるだけだと存《ぞん》じて何《なんに》も為《さ》せないで置《お》きますから、段々《だん/″\》、手《て》を動《うご》かす働《はたらき》も、ものをいふことも忘《わす》れました。其《それ》でも那《あ》の、謡《うた》が唄《うた》へますわ。二ツ三ツ今《いま》でも知《し》つて居《を》りますよ。さあ御客様《おきやくさま》に一ツお聞《き》かせなさいましなね。)
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
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(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
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(例)※[#「さんずい+散」、36-13]《しぶき》
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(例)ばら/\と
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