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高野聖その93
(いえ、其《それ》には及《およ》びませぬ、雑巾《ざうきん》をお貸《か》し下《くだ》さいまし。あゝ、それからもし其《そ》のお雑巾《ざうきん》次手《ついで》にづツぷりお絞《しぼ》んなすつて下《くだ》さると助《たすか》ります、途中《とちう》で大変《たいへん》な目《め》に逢《あ》ひましたので体《からだ》を打棄《うつちや》りたいほど気味《きみ》が悪《わる》うございますので、一ツ背中《せなか》を拭《ふ》かうと存《ぞん》じますが恐入《おそれい》りますな。)
(然《さ》う、汗《あせ》におなりなさいました、嘸《さ》ぞまあ、お暑《あつ》うござんしたでせう、お待《ま》ちなさいまし、旅籠《はたご》へお着《つ》き遊《あそ》ばして湯《ゆ》にお入《はい》りなさいますのが、旅《たび》するお方《かた》には何《なに》より御馳走《ごちそう》だと申《まを》しますね、湯《ゆ》どころか、お茶《ちや》さへ碌《ろく》におもてなしもいたされませんが、那《あ》の、此《こ》の裏《うら》の崖《がけ》を下《お》りますと、綺麗《きれい》な流《ながれ》がございますから一|層《そう》其《それ》へ行《い》らつしやツてお流《なが》しが宜《よ》うございませう、)
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「さんずい+散」、36-13]《しぶき》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ばら/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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