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高野聖その209
其《それ》もさ、刻《きざ》んだのではないで、一本《いつぽん》三《み》ツ切《ぎり》にしたらうといふ握太《にぎりぶと》なのを横啣《よこくはえ》にしてやらかすのぢや。
婦人《をんな》はよく/\あしらひかねたか、盗《ぬす》むやうに私《わし》を見《み》て颯《さつ》と顔《かほ》を赤《あか》らめて初心《しよしん》らしい、然様《そん》な質《たち》ではあるまいに、羞《はづ》かしげに膝《ひざ》なる手拭《てぬぐひ》の端《はし》を口《くち》にあてた。
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「さんずい+散」、36-13]《しぶき》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ばら/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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