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高野聖その2
飛騨《ひだ》から信州《しんしう》へ越《こ》える深山《しんざん》の間道《かんだう》で、丁度《ちやうど》立休《たちやす》らはうといふ一本《いつぽん》の樹立《こだち》も無《な》い、右《みぎ》も左《ひだり》も山《やま》ばかりぢや、手《て》を伸《の》ばすと達《とゞ》きさうな峯《みね》があると、其《そ》の峯《みね》へ峯《みね》が乗《の》り巓《いたゞき》が被《かぶ》さつて、飛《と》ぶ鳥《とり》も見《み》えず、雲《くも》の形《かたち》も見《み》えぬ。
道《みち》と空《そら》との間《あひだ》に唯《たゞ》一人《ひとり》我《わし》ばかり、凡《およ》そ正午《しやうご》と覚《おぼ》しい極熱《ごくねつ》の太陽《たいやう》の色《いろ》も白《しろ》いほどに冴《さ》え返《かへ》つた光線《くわうせん》を、深々《ふか/″\》と頂《いたゞ》いた一重《ひとへ》の檜笠《ひのきがさ》に凌《しの》いで、恁《か》う図面《づめん》を見《み》た。」
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
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(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
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(例)※[#「さんずい+散」、36-13]《しぶき》
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(例)ばら/\と
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