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高野聖その6
若狭《わかさ》へ帰省《きせい》する私《わたし》もおなじ処《ところ》で泊《とま》らねばならないのであるから、其処《そこ》で同行《どうかう》の約束《やくそく》が出来《でき》た。
渠《かれ》は高野山《かうやさん》に籍《せき》を置《お》くものだといつた、年配《ねんぱい》四十五六《しじふごろく》、柔和《にうわ》な、何等《なんら》の奇《き》も見《み》えぬ、可懐《なつかし》い、おとなしやかな風采《とりなり》で、羅紗《らしや》の角袖《かくそで》の外套《ぐわいたう》を着《き》て、白《しろ》のふらんねるの襟巻《えりまき》を占《し》め、土耳古形《とるこがた》の帽《ばう》を冠《かむ》り、毛糸《けいと》の手袋《てぶくろ》を箝《は》め、白足袋《しろたび》に、日和下駄《ひよりげた》で、一見《いつけん》、僧侶《そうりよ》よりは世《よ》の中《なか》の宗匠《そうしやう》といふものに、其《それ》よりも寧《むし》ろ俗《ぞく》歟《か》。
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
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(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
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(例)※[#「さんずい+散」、36-13]《しぶき》
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(例)ばら/\と
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