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高野聖その240
暫《しばら》くすると今《いま》其奴《そやつ》が正面《しやうめん》の戸《と》に近《ちかづ》いたなと思《おも》つたのが、羊《ひつじ》の啼声《なきごゑ》になる。
私《わし》は其《そ》の方《はう》を枕《まくら》にして居《ゐ》たのぢやから、つまり枕元《まくらもと》の戸外《おもて》ぢやな。暫《しばら》くすると、右手《めて》の彼《か》の紫陽花《あぢさい》が咲《さ》いて居《ゐ》た其《そ》の花《はな》の下《した》あたりで、鳥《とり》の羽《は》ばたきする音《おと》。
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
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(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
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(例)ばら/\と
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