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高野聖その194
馬《うま》は背《せな》、腹《はら》の皮《かは》を弛《ゆる》めて汗《あせ》もしとゞに流《なが》れんばかり、突張《つツぱ》つた脚《あし》もなよ/\として身震《みぶるひ》をしたが、鼻面《はなづら》を地《ち》につけて、一|掴《つかみ》の白泡《しろあは》を吹出《ふきだ》したと思《おも》ふと前足《まへあし》を折《を》らうとする。
其時《そのとき》、頤《あぎと》の下《した》へ手《て》をかけて、片手《かたて》で持《も》つて居《ゐ》た単衣《ひとへ》をふわりと投《な》げて馬《うま》の目《め》を蔽《おほ》ふが否《いな》や、
作品:高野聖
作者:泉鏡太郎
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底本:「新編 泉 鏡花集 第八巻」岩波書店
2004(平成16)年1月7日第1刷発行
底本の親本:「高野聖」左久良書房
1908(明治41)年2月20日
初出:「新小説 第五年第三巻」春陽堂
1900(明治33)年2月1日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:砂場清隆
校正:門田裕志
2007年2月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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《》:ルビ
(例)参謀本部《さんぼうほんぶ》
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(例)柳《やな》ヶ|瀬《せ》では
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(例)※[#「さんずい+散」、36-13]《しぶき》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ばら/\と
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