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湖南の扇その46
作品:湖南の扇
作者:芥川龍之介
僕はこう言う話の中《うち》に玉蘭の来たのに気づいていた。彼女は鴇婦と立ち話をした後、含芳の隣に腰を下ろした。
譚は玉蘭の来たのを見ると、又僕をそっちのけに彼女に愛嬌《あいきょう》をふりまき出した。彼女は外光に眺めるよりも幾分かは美しいのに違いなかった。少くとも彼女の笑う度にエナメルのように歯の光るのは見事だったのに違いなかった。しかし僕はその歯並みにおのずから栗鼠を思い出した。栗鼠は今でも不相変、赤い更紗《さらさ》の布《きれ》を下げた硝子窓《ガラスまど》に近い鳥籠の中に二匹とも滑らかに上下していた。
「じゃ一つこれをどうだ?」
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底本:「昭和文学全集 第1巻」小学館
1987(昭和62)年5月1日初版第1刷発行
親本:岩波書店刊「芥川龍之介全集」
1977(昭和52)年〜1978(昭和53)年
入力:j.utiyama
校正:柳沢成雄
1998年10月20日公開
2007年2月11日修正
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《》:ルビ
(例)広東《かんとん》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)当時|長江《ちょうこう》に
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(例)※[#「さんずい+元」、第3水準1-86-54]江丸《げんこうまる》
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