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湖南の扇その17


作品:湖南の扇
作者:芥川龍之介



 譚《たん》は若い船頭に命令を与える必要上、ボオトの艫《へさき》に陣どっていた。が、命令を与えるよりものべつに僕に話しかけていた。
「あれが日本領事館だ。………このオペラ・グラスを使い給え。………その右にあるのは日清汽船会社。」
 僕は葉巻を銜《くわ》えたまま、舟ばたの外へ片手を下ろし、時々僕の指先に当る湘江《しょうこう》の水勢を楽しんでいた。譚の言葉は僕の耳に唯《ただ》一つづりの騒音だった。しかし彼の指さす通り、両岸の風景へ目をやるのは勿論《もちろん》僕にも不快ではなかった。



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底本:「昭和文学全集 第1巻」小学館
   1987(昭和62)年5月1日初版第1刷発行
親本:岩波書店刊「芥川龍之介全集」
   1977(昭和52)年〜1978(昭和53)年
入力:j.utiyama
校正:柳沢成雄
1998年10月20日公開
2007年2月11日修正
青空文庫作成ファイル:
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《》:ルビ
(例)広東《かんとん》

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(例)当時|長江《ちょうこう》に

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(例)※[#「さんずい+元」、第3水準1-86-54]江丸《げんこうまる》
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