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湖南の扇その42


作品:湖南の扇
作者:芥川龍之介



 僕はこう言う説明を聞いても、未《いま》だに顔を見せない玉蘭は勿論、彼女の友だちの含芳にも格別気の毒とは思わなかった。けれども含芳の顔を見た時、理智的には彼女の心もちを可也《かなり》はっきりと了解した。彼女は耳環《みみわ》を震わせながら、テエブルのかげになった膝の上に手巾《ハンケチ》を結んだり解いたりしていた。
「じゃこれもつまらないか?」
 譚は後にいた鴇婦の手から小さい紙包みを一つ受け取り、得々とそれをひろげだした。その又紙の中には煎餅《せんべい》位大きい、チョコレェトの色に干からびた、妙なものが一枚包んであった。



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底本:「昭和文学全集 第1巻」小学館
   1987(昭和62)年5月1日初版第1刷発行
親本:岩波書店刊「芥川龍之介全集」
   1977(昭和52)年〜1978(昭和53)年
入力:j.utiyama
校正:柳沢成雄
1998年10月20日公開
2007年2月11日修正
青空文庫作成ファイル:
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《》:ルビ
(例)広東《かんとん》

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(例)当時|長江《ちょうこう》に

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   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「さんずい+元」、第3水準1-86-54]江丸《げんこうまる》
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