×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

TOP

湖南の扇その19


作品:湖南の扇
作者:芥川龍之介



 丁度譚のこう言いかけた時、僕等の乗っていたモオタア・ボオトはやはり一|艘《そう》のモオタア・ボオトと五六間隔ててすれ違った。それは支那服の青年の外にも見事に粧《よそお》った支那美人を二三人乗せたボオトだった。僕はこれ等の支那美人よりも寧《むし》ろそのボオトの大辷《おおすべ》りに浪《なみ》を越えるのを見守っていた。けれども譚は話半ばに彼等の姿を見るが早いか、殆《ほとん》ど仇《かたき》にでも遇《あ》ったように倉皇《そうこう》と僕にオペラ・グラスを渡した。
「あの女を見給え。あの艫《へさき》に坐《すわ》っている女を。」
 僕は誰にでも急《せ》っつかれると、一層何かとこだわり易い親譲りの片意地を持合せていた。のみならずそのボオトの残した浪はこちらの舟ばたを洗いながら、僕の手をカフスまでずぶ濡《ぬ》れにしていた。



次へ


底本:「昭和文学全集 第1巻」小学館
   1987(昭和62)年5月1日初版第1刷発行
親本:岩波書店刊「芥川龍之介全集」
   1977(昭和52)年〜1978(昭和53)年
入力:j.utiyama
校正:柳沢成雄
1998年10月20日公開
2007年2月11日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。




-------------------------------------------------------
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)広東《かんとん》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)当時|長江《ちょうこう》に

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「さんずい+元」、第3水準1-86-54]江丸《げんこうまる》
-------------------------------------------------------



湖南の扇その1
湖南の扇その2
湖南の扇その3
湖南の扇その4
湖南の扇その5
湖南の扇その6
湖南の扇その7
湖南の扇その8
湖南の扇その9
湖南の扇その10
湖南の扇その11
湖南の扇その12
湖南の扇その13
湖南の扇その14
湖南の扇その15
湖南の扇その16
湖南の扇その17
湖南の扇その18
湖南の扇その19
湖南の扇その20
湖南の扇その21
湖南の扇その22
湖南の扇その23
湖南の扇その24
湖南の扇その25
湖南の扇その26
湖南の扇その27
湖南の扇その28
湖南の扇その29
湖南の扇その30
湖南の扇その31
湖南の扇その32
湖南の扇その33
湖南の扇その34
湖南の扇その35
湖南の扇その36
湖南の扇その37
湖南の扇その38
湖南の扇その39
湖南の扇その40
湖南の扇その41
湖南の扇その42
湖南の扇その43
湖南の扇その44
湖南の扇その45
湖南の扇その46
湖南の扇その47
湖南の扇その48
湖南の扇その49
湖南の扇その50
湖南の扇その51
湖南の扇その52
湖南の扇その53





【PR】ニュースに一言    時事ニュース