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湖南の扇その38
作品:湖南の扇
作者:芥川龍之介
「ふん、どうしても白状しない。誰の出迎いに行ったと尋いているんだが。……」
すると突然林大嬌は持っていた巻煙草《まきたばこ》に含芳を指さし、嘲《あざけ》るように何か言い放った。含芳は確かにはっとしたと見え、いきなり僕の膝を抑えるようにした。しかしやっと微笑したと思うと、すぐに又一こと言い返した。僕は勿論《もちろん》この芝居に、――或はこの芝居のかげになった、存外深いらしい彼等の敵意に好奇心を感ぜずにはいられなかった。
「おい、何と言ったんだい?」
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底本:「昭和文学全集 第1巻」小学館
1987(昭和62)年5月1日初版第1刷発行
親本:岩波書店刊「芥川龍之介全集」
1977(昭和52)年〜1978(昭和53)年
入力:j.utiyama
校正:柳沢成雄
1998年10月20日公開
2007年2月11日修正
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《》:ルビ
(例)広東《かんとん》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)当時|長江《ちょうこう》に
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(例)※[#「さんずい+元」、第3水準1-86-54]江丸《げんこうまる》
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